シロアリは「湿気を含んだ木材を好む」という特性を持ちます。このため、雨漏りはシロアリと深い関連があります。家の木材が雨漏りにより湿った状態が続くと、シロアリが集まりやすくなり、彼らの繁殖に適した環境が作られることになります。
多くのシロアリの発生は、実は雨漏りが主な原因とされています。したがって、雨漏りを防ぐことが、シロアリの予防に繋がる重要な手段となります。
シロアリが繁殖しやすい場所
シロアリが好んで繁殖する場所には、地面に接触している床下、温かく湿気の多い壁の内部、そして湿った木材などがあります。家の外壁に経年劣化によるひび割れが生じると、そこから水が侵入しやすくなります。この状態を放置すると、やがて柱や壁にも水分が浸透し、高い湿度の環境が生まれ、これがシロアリの発生の可能性をあげてしまいます。
特に、浴室や洗面所の壁裏はシロアリが繁殖しやすい場所の一つです。浴室にカビが生えたり、壁に隙間が見つかった場合は、速やかに対処が必要です。また、換気が不十分な場所もシロアリの発生リスクが高まります。
ウッドデッキがある家では、濡れたり腐ったりした木材を放置するとシロアリが集まりやすくなります。これは古い家や木造の家にも当てはまります。新築の場合、基礎部分にシロアリ対策が施されることが多いですが、中古物件や借家では特にシロアリが発生しやすい箇所をチェックすることが大切です。
外側だけでなく、床下や屋根裏など、目に見えない部分のチェックも大切です。これらの場所も定期的に確認することで、シロアリの発生を未然に防ぐことができます。
シロアリの侵入経路とは
シロアリの侵入経路を知ることは、被害を防ぐ上で重要です。ここでは、シロアリがどのように建物に入り込むかについて説明します。
コンクリートの隙間
シロアリは非常に小さな隙間からも侵入できるため、家の基礎のひび割れから床下に入り込むことがあります。
加えて、シロアリは強靭な顎を持っているので、コンクリートに穴を開ける力もあります。小さなひび割れでも放置すると、穴が拡大し、建物の耐震性を損なう危険性があります。
土から侵入
イエシロアリやヤマトシロアリは土から建物に侵入します。これらのシロアリは地中に大きな巣を作り、餌を求めて活動します。特に床下は湿気が多く、木材が露出している場合が多いため、シロアリにとって理想的な環境です。
ヤマトシロアリは床下で繁殖し、イエシロアリも同様に土から床下へ侵入しますが、より強い繁殖力を持っています。被害が屋根裏まで及ぶこともあるので注意が必要です。
シロアリが通った経路は目視で確認できるため、定期的なチェックが効果的です。
羽アリの侵入
春の4月から6月頃は、羽アリが新しい巣を求めて飛び立つ繁殖期です。
家の中で羽アリを見つけた場合は、巣が近くにあるかもしれません。特に、浴室や天井などが侵入の多い場所です。この時期の羽アリには特に注意が必要です。
天井から侵入
床下が一般的な侵入経路ですが、アメリカカンザイシロアリなどは天井から侵入することもあります。天井の裏や通気口なども定期的にチェックすることが大切です。
これらの侵入経路を把握し、床下だけでなく、家の他の部分にも注意を払うことが重要です。
シロアリ発生を知らせる主な症状
シロアリを放置すると、重大な被害を招くことがあります。シロアリの存在は、一見見過ごされがちですが、注意深く観察すれば、その兆候を見つけることができます。これらのサインを早期に見つけることで、被害を最小限に抑えることが可能です。
蟻道(ぎどう)がある
シロアリが作る道は蟻道(ぎどう)と呼ばれ、シロアリの排泄物、土、木材のカスが混じって作られます。表面は硬く盛り上がった形をしています。
家の中や周囲に木材の粉を伴う通路がある場合、シロアリがいる可能性が高いです。
ただし、蟻道を発見しても壊さないように注意しましょう。壊してしまうと、被害の原因や範囲を特定できなくなる可能性があります。部分的な破壊で確認することを推奨します。
木部まで蟻道がある場合は、家の内部にシロアリが定着していることも考えられます。しかし、この状態で殺虫剤を使用すると、シロアリが様々な場所に散ってしまい、駆除が難しくなることがあるので注意が必要です。
乾いた音がする
家の柱を叩いて乾いた音がする場合は、中が空洞になっている可能性があります。床がギシギシと鳴る場合も、シロアリによる被害の兆候です。被害が進行すると、柱の位置がずれたり、耐震性が低下したりする恐れがあります。
羽アリの発生
家の中や周囲でシロアリの羽アリを目撃すると、より警戒が必要です。羽アリは胴体にくびれがなく、羽が重なって楕円形です。5月から6月にかけて飛び立つことが多いです。
羽アリが数匹見られる場合は外からの侵入も考えられますが、多数見られる場合は既に巣が形成されている可能性があります。
シロアリの被害を適切に認識し、迅速な対策を取ることは重要です。
シロアリによる建物の被害
柱や木材に小さな穴が開く
壁に1~2mm程度の小さな穴が開いている場合、砂の粒が穴から出ているときはシロアリの存在が疑われます。同様の穴はキクイムシの仕業の場合もありますが、シロアリの場合、より深刻な被害が生じることがあります。このような症状を見つけた場合は、専門業者に速やかに依頼しましょう。
建物の空洞化と耐震性の低下
シロアリが壁や柱を食べることで空洞が生じ、それにより耐震性が低下する恐れがあります。実際に阪神淡路大震災では、シロアリにより蝕まれた住宅が大きく被害を受けた事例があります。
外壁材の剥離
外壁の一部が剥がれている場合、シロアリが原因である可能性があります。シロアリは床下だけでなく、外壁から建物内に侵入し、屋根裏まで被害を及ぼすことがあります。
大規模なリフォームが必要になる場合も
シロアリによって屋根裏の木材が食害されると、屋根材がずれたり、柱や床材が損傷するなどの深刻な被害が生じ、大規模なリフォームが必要になることもあります。
そのため、被害が小さいうちに業者に調査を依頼し早めの駆除を行うことをおすすめします。
木造住宅に限らず、RC構造や軽量鉄骨の住宅でも木材が使用されているため、どのタイプの住宅もシロアリのリスクがあります。
シロアリを寄せ付けないために
シロアリの予防対策は、家を守るためにとても重要です。ここでは具体的な予防策をご紹介します。
湿気をためない
家の基礎には床下換気口が設けられていることが多く、これによって床下の湿気を防ぎます。最近では基礎パッキン工法が主流になっており、従来の換気口が減少していますが、いずれにしても床下の換気は重要です。
基礎周りに植栽を密集させたり、換気口を荷物で塞いだりすることは避け、風通しの良い環境を保ちましょう。
雨漏り・水漏れを放置しない
雨漏りや水漏れはシロアリを引き寄せる原因になり得ます。家の中だけでなく外部の変色やカビ、塗膜の剥がれなどにも注意し、怪しい場所があれば早めに業者に相談することが大切です。
家の周りの木材・倒木を片付ける
家の周りに残った木材や庭の倒木、腐ったウッドデッキなどはシロアリの好適な住処になり得ます。特に床下に湿気がある場合や雨漏りがある場合、これらの木材から建物内にシロアリが侵入する可能性があります。
定期的に片付けを行い、シロアリが好む環境を減らすことが重要です。
シロアリ調査について
シロアリ調査は必要?
シロアリ調査とは、シロアリ駆除の専門家が家の床下に入り、シロアリの痕跡や被害の状況を調べる作業を指します。
多くの人が「自分の家もシロアリ調査をしたほうがいいのか?」と疑問を持つと思いますが、
できる限り「どのような住宅でも、できるだけ早めに専門家によるシロアリ調査を受ける」ことでシロアリの早期発見と被害の予防を行うことができます。
シロアリは木材に含まれるセルロースを餌にし、住宅に使用される木材を食害して家を劣化させます。自宅がシロアリの被害に遭うと、建物の耐久性が低下し、構造が歪むことがあり、資産価値も低下してしまいます。
シロアリ被害は、気付かないうちに急速に進行することがあり、早期発見と迅速な対応が必要です。しかし、自分でシロアリの有無を見分けるのは難しいため、シロアリかどうかの正確な判断はプロでにお任せすると安心です。
特に、自宅の状態を把握するために重要なのが床下の調査です。この調査は専用の機材やスキルが必要で、自分で行うのは非常に難しいため、シロアリ調査は専門のシロアリ駆除業者に依頼することをおすすめします。
木造住宅でなくてもシロアリは出る?
多くの人が「私の家はRC(鉄筋コンクリート)造なのでシロアリとは無縁」と考えがちですが、これは必ずしも正確ではありません。
実際には、木造住宅でなくても、家の構造には床下材や玄関など、どこかに木材が使用されている場合がほとんどです。完全に木材を使っていない家はとても稀です。
さらに、シロアリはコンクリートの隙間を通って侵入することがあり、時にはコンクリートをかじり、その奥にある木材にまで被害を及ぼすこともあります。
上記のことからRC造の住宅を含むほぼ全ての家において、専門家によるシロアリ調査は非常に重要です。これは、住宅の種類に関わらず、シロアリのリスクに備えるための重要なステップと言えます。
シロアリの調査を行った方がよいとき
シロアリ駆除の施工から5年が経過している
シロアリ駆除の施工から5年が経過した場合、再度シロアリの調査を行うことが推奨されます。多くのシロアリ駆除業者は、施工後の再発に対して5年間の「施工保証(再施工保証)」を提供しています。
この5年という期間は、駆除に使用される薬剤の有効期限が約5年であること、また5年の間に床下の環境が変わる可能性があるため、重要な目安とされています。例えば、床下の環境が変化することや、新たに庭にシロアリが侵入することもあり得ます。
したがって、駆除や予防の施工を行ってから5年以上が経過した場合は、再度シロアリの調査を行うことが良いでしょう。この際、以前の業者に再度調査を依頼することもできますし、異なる業者に見てもらうことも可能です。緊急を要する状況ではないため、信頼できる業者をじっくり選ぶ時間もあります。シロアリ駆除業者を比較検討して、最適な業者を選ぶことが大切です。
シロアリを見つけた
家の中や周囲でシロアリのような虫を見つけた場合、速やかに専門家によるシロアリ調査を実施すべきです。
シロアリは家の中だけでなく、庭の枯れ木や材木にも生息する可能性があり、そこから室内へ侵入することもあります。敷地内のどこにシロアリを見つけても、家の構造に影響を及ぼす恐れがあるため、見つけ次第、すぐにシロアリ駆除の専門業者に連絡し、調査を依頼することが重要です。早期発見と迅速な対応が、被害の拡大を防ぐためには不可欠です。
羽アリを見つけた
自宅でシロアリの羽アリを発見した場合、既にシロアリが家の中に侵入している可能性が高いため、速やかにシロアリ調査を行う必要があります。
シロアリの羽アリは、住宅に被害をもたらす種類によって出現する時期が異なります。ヤマトシロアリは4月から6月にかけて羽アリが出現し、イエシロアリは6月から7月に羽アリが見られます。また、外来種であるアメリカカンザイシロアリの羽アリは7月から10月に出現することがあります。
これらの期間にシロアリの羽アリを目撃した場合は、被害が拡大する前に専門家によるシロアリ調査を依頼することが重要です。専門家による適切な調査と処置が、シロアリ被害の早期発見と対処につながります。
羽が落ちているのを見つけた
シロアリの羽アリは、飛び立った後、着地して羽を落とし、新たな巣を作る傾向があります。
そのため、もし家の周辺でシロアリの羽を見つけた場合は、すでに近くで新しいシロアリの巣が形成され始めている可能性があることを意味します。シロアリの羽は他の昆虫の羽と見分けにくいこともありますが、シロアリの可能性がある場合には、万が一を避けるためにも専門の業者に相談することが推奨されます。業者による適切な調査と対策が、シロアリ被害の拡大を防ぐために重要です。
フンや木くずを見つけた
木材内部の食害により、壁の下などにフンや木くずのようなものが落ちることがある場合、アメリカカンザイシロアリのフンである可能性が考えられます。ヤマトシロアリやイエシロアリは、一般的に目立つ場所にフンを残す習性はありません。
この種のフンを発見した場合、早急に対応しないと被害が拡大する恐れがあります。ただし、フンや木くずを残す昆虫には他にも種類があります。クロアリやヒラタキクイムシなどが代表例です。
異なる昆虫には対応方法が変わるため、見つけたフンや木くずには注意が必要です。特にシロアリの場合、大規模な被害を引き起こす危険性があるので、家の中でこれらを見つけたら、まずシロアリの可能性を疑い、適切に対応することが重要です。
発見したフンは、すぐに処分するのではなく、一部をビニール袋などに入れて保管しておきましょう。後でシロアリ駆除業者に見せることで特定できる可能性があります。
近所でシロアリが出た
ヤマトシロアリは土中を移動する種類のシロアリで、飛来して直接家の中に入ることはありません。そのため、近隣でシロアリが発見されたとしても、直接自宅に被害が及ぶことは基本的にありません。
近隣のシロアリ被害に対しては、特別な心配は不要ですが、ヤマトシロアリが土中から床下に侵入する可能性に備え、通常のシロアリ予防策を施すことで被害を防ぐことができます。
一方で、アメリカカンザイシロアリという種類は、飛来して家屋に侵入し、乾燥した木材を食害することがあります。
しかし、この種類のシロアリによる被害が報告されている地域は限られており、過度に心配する必要はないでしょう。それでも不安な場合は、専門家に相談し、適切な調査や判断を依頼するのが良いです。
まとめ
シロアリの予防対策は、大切な住まいを守るために非常に重要です。シロアリは地中に潜んで常に木材を探し、いつ家を狙うか予測が難しい存在です。
このため、シロアリの被害を防ぐには一度きりの対策ではなく、継続的な予防措置が必要です。シロアリを完全に防ぐためには、自分だけでの予防では限界があり、専門知識と技術を持つ専門業者に定期的に依頼することが最善の方法です。
専門業者であれば、家の構造やシロアリの種類に応じた適切な予防策を提案し、効果的に実施することができます。